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何度も同じ夢を見る。
夢の中で私はバラバラのパズルの中に立っている。それはテーブルに収まるようなものではなくて床一面に広がっていた。
1つひとつのピースは、学校で使うノート位の大きさがあるが、それがどれだけの数があるのかはよく分からない。

そして、どんな絵が出来上がるのか、今まで組み上がっている部分がなんの絵になっているのかも正直よく分からなかった。

それでも、これをどうしても作り上げなきゃいけない

それだけは分かるのです。

そこに大切な人との大切な約束があるはずだと。



「菫ちゃーん。お疲れ様ぁ。
 今日も今日とて可愛いねェ。
 俺、菫ちゃん居なかったら風紀委員なんてとっくに辞めてたよ」
「まだ終わってないわよ。
 門が閉まるまであと1分あるわ」
同じ風紀委員の善逸があと1分でしょ。もう教室行こうよと駄々をこねていたが、そんな声には耳を貸さず、同じ風紀委員の菫は校門を見つめていた。

しかしその1分も過ぎ、ガラガラと音を立てて門が閉まっていく。

ーー先輩たちは遅刻ですか。

小さくため息が出る。次は気をつけてやると言った気がする。でも校則であるのは間違いないけれど、私にそう言ったからといって、それを守らなければいけない決まりはない。
それよりも今は、風紀委員の活動が終わったのだから急いで教室に戻らなければいけない。後ろ髪を引かれる思いもありながら門に背を向け昇降口へと歩き出す。

ブオオオォォォォーー

ーー朝からバイクふかし過ぎよ。
  学校近いんだから、考えてもらわないと

呆れた気持ちで校門へ振り返った時、目を疑った


一台のバイクが校門を飛び越えて校地内に着地を決めたから。

その一瞬、あんなに聞こえていたはずのバイクのエンジン音は菫の耳には一切聞こえない。
ただパチっと聞き覚えのある音が一つした。


「謝花先輩っ!!なんて危ないことしているんですか!」
「菫かぁ。しょうがねぇだろ。門閉まってんだもんよぉ」
「はよ菫」
バイクに駆け寄ると、妓夫太郎の後ろに座っていた妹、梅がひょこっと菫に笑顔を向けた。
「おはようございます。
 閉門時間過ぎましたから閉まってるのは当たり前ですよ。
 それに、バイク通学ならちゃんと学校側に申請書を出して、ヘルメット着用が厳守。そして梅先輩には申し訳ないですけど、二人乗りは…」
「菫は真面目過ぎんだよなぁ。

 めんどくせぇんだよ。
 職員室行くとあーでもねぇ、こーでもねぇって。
 申請用紙(かみきれ)一枚貰うのにどんだけ時間を無駄にしなきゃなんねぇんだ」
「そういうと思って、申請用紙もらっておきました。
 ですから、コレ書いて申請して下さい。
 因みに学校側に棄却されてもまだ用紙ありますから何度でもどうぞ」
申請用紙を渡すなり、菫はいそいそと昇降口へ走って行ってしまった。妓夫太郎が渡された紙を見るなり驚きの色が差す。
そこには整った字で、書くときの注意事項が書き込まれ、守らなければいけない最低限の事が分かりやすく纏められていた。

「菫やるわね」


ーーーーーー

次の授業は移動教室のため、準備をしていると同じクラスで友達の恋雪が授業道具を抱えてやってきた。一緒に移動するのは言わずもがなである。
「菫ちゃん朝から教室ザワザワしてましたよ」
「??え?どうして?」
「校門を越えてきたバイクに走っていったからだと思いますよ」
「あれは私も驚きでした」

また何処かでパチっと音がした。

「「だけど、謝花先輩は怖い人じゃないわ」」

恋雪は菫の顔を見て微笑んでいた。
「狛治さんのお友達でもありますしね」


「菫いるかー?」
席から立ち上がった所に、入り口から呼ぶ声がした。訪ねてきたのは隣、筍組の炭治郎。菫の姿を確認するなり教室内へ入ってきた。こういう律儀な所が炭治郎らしいなと思ったりする。
「菫ごめんっ!!
 数学の教科書を貸してくれないか。
 昨日六太が熱出して慌ただしくしてたら、何故か禰󠄀豆子の数学の教科書が入ってて、、」
「良いけど、その次は数学なので必ず返してね。あと、六太くんは?」
「朝には熱も下がって、今日は念のため家で休んでる。
 あとコレ。うちの試作品。あとで感想聞かせてくれ」
「こんなにいっぱい?!」
普通の人でも今日の量は豊作で、食の細い菫にとっては驚きの量である。
「菫が気に入るパンは人気が出るからさ
 試食会でもしてくれたら良いよ」
「菫ちゃんそろそろ行かないと」

恋雪の言葉に、パンと教科書が交換のような形で入れ替え、3人揃って教室を後にした。


授業が終わり移動教室から戻ると、

『教科書ありがとう
 次、体育だから直接返せなくてごめんな
                 炭治郎』

と付箋のついた数学の教科書が机の上に置かれていた。
 




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