E5000hit御礼


「こんなに寒くなったのに、なんでそんな格好のままなんですかぁ!!」
縁側に座って日輪刀の手入れをしている実弥を見つけ、柚充はブルブルと体が揺れた。
「見るだけでも寒いです!お腹痛くなっても知りませんよ!」
羽織の袖口に両手を引っ込める。
「ん?ああ。確かにもうすっかり木の葉は色づいたなァ」
「実弥様って意外と言う事は風流人ですよね
 って、そこじゃ無くて!
 前を閉めるとかそう言う事は考えないんですか!!」
「窮屈な格好で居る気はねェ」

ーーあ、いえ、だから、そう言う事じゃなくて、、、
  だったら縫製係に寸法を変えてもらうとか、
  ほかにも方法はあると思うんですけど

柚充の理解を超える方向性でポカリ開いた口が塞がらない。頭の片隅で「だからスケベ柱なんて言われるんですよ」なんて言葉が駆け抜けていったが、恐ろしくて言葉にはしない。

きっと、実弥様はこの格好を改める気も、その必要性も感じていないんだろうと結論づける。
柚充があれこれ考えを巡らせている間に刀の手入れは終わったようで刀身の歪みが無いかなど一通り眺め、刀を鞘へと運ぶ。
戦い方と違って、繊細さを見せるその仕草に思わず目を奪われてしまった。

鞘に収まりカチャと音がなる
その音にハッとして時間が動き出した。

「そうだ。お汁粉食べましょう。
 温まりますしね。
 これで実弥様のお腹も守られますよ」
いい考えだ!とにっこり笑って実弥に背を向け台所へと向かおうとした。
「柚充」
珍しく名前を呼ぶものだから、驚いて振り返ると腕を強く引かれた。

不意を突かれ体制を崩した体は、その原因を作った実弥によって腕の中へと収められる。
「なっ!!なにするんですか!!」
「餓鬼は体温高けェからな」
「私は湯たんぽじゃないです!!」


「いいんだ。あたたかければ」

「やっぱり寒いんじゃないですか…」


どっちが餓鬼なのか分かったもんじゃないと、思わずふっと笑ってしまう。
でも、柚充にも実弥の温もりがほんわり伝わって温い。


「お汁粉すぐ作りますから」
離して下さいとは言わないけど。


こんな事もあるなら

寒いのも悪くない。

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5000hitありがとうございます!
今回はシンプルに。季節は思いの外進んでもう寒いんですけどね(苦笑)
お汁粉だけに少しは甘くなって居れば幸いです。
お汁粉最中なるものを買ってみました。お湯を入れると出来ますよっていうお手軽商品です。
うん。でもやっぱりお餅は入ってない。
お餅焼いて入れたら更に美味しそうです。


21.12.14




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