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理事長である、産屋敷耀哉はゆっくりと説明を始めた。
鬼滅学園は地獄最後の試練であると。
この鬼滅学園という空間は、鬼となってしまった者たちが次の生で道を踏み外してしまわない様に、鬼である間に無くしてしまった人としての大切なモノを見つけ出す。そのための場所であり、それを見つけ出す事ができれば晴れて転生の道へと歩き出す事ができる。
試練と言いながらも、それは試練を受ける対象を、蹴落とすものではなく、記憶を持っていたり、持たずにいたりさせながら少しでも大切なモノを思い出せる様にと対象の周辺環境は整えられている。
つまり、試練の中で出会う人々はその対象にとって大切なモノを見失わない為に出会えるようになっているのだ。
だからといって、そこで作り上げた関係性は対象が作り上げた本物に間違いはない。
本当は菫はこの試練をクリアしていた。それでも、妓夫太郎と一緒でなければ転生はしないと待ち続けているのだった。
しかし、妓夫太郎と梅はいつもどこかでこぼれ落ちてしまう。もちろん妓夫太郎の試練の中にも"菫"という人は存在する。しかし、どうしてもそれでは妓夫太郎と梅は試練をクリアする事ができなかった。
「そこで菫は言ったんだ。
私を妓夫太郎さんと梅さんの試練に入らせてくださいと」
前代未聞の申し出に、耀哉にもそれが安全な事かは分からなかった。それでも、なんの罪もない人たちを鬼化させて、頸を落とし、人を喰ったんだから地獄に行け。それでおしまいと。それで良いとは思えなかった。だからこうして地獄で鬼たちの転生を耀哉は見守っていた。そして、菫の申し出を受け入れた。
菫が介入するようになってから記憶を持っていても、持っていなくても妓夫太郎と梅は改善が見られ、大切なモノに手が届く様になった。
では、なぜまだ転生を果たしていないのか。
「菫が記憶に押しつぶされてしまうのだよ。
記憶を持たずに妓夫太郎の試練に入っても、必ずどこかで思い出し、鬼の記憶に心を潰し、妓夫太郎が大切なものよりも菫を選び、またやり直しになってしまう」
「そんな、、
それじゃあ妓夫太郎さんが転生できないのは私のせいじゃないですか」
「それは違うよ。
君が居なければ、兆しすら遠いんだ。」
それは確実なのだけれどと耀哉の言葉が続く。
「菫が妓夫太郎と梅に必要なのは分かっている。でも、菫の魂が限界なのだよ。やり直すたびに菫の魂が傷付いている。
だから、これが最後の機会だと思って欲しい。これでまたうまくいかなかったとしても、菫がなんと言おうが、私は菫を転生させる」
「そんなっ!」
「魂が消えてしまえば、転生すらできなくなってしまう。
それだけはさせられない。分かっておくれ」
耀哉は話が終わると「私と話したことは忘れてしまうが、ご武運を」と消えてしまった。
菫は最初に耀哉が"あちら"だと言った方へ進んでいき、
そこで見た。
妓夫太郎と堕姫がいるはずの遊郭はぐちゃぐちゃに崩れ落ち、その姿は探せど探せど見つからない。
空に赤みが差し始めた頃、やっと見つけた。瓦礫に引っかかる様に妓夫太郎の首に下がっていたはずの布を。
でも、それで分かってしまった。
妓夫太郎と堕姫が鬼殺隊に討たれて居なくなってしまったということを。
涙が流れて仕方が無かった。
これは記憶であって、変えることはできないと分かっていても、
愛しい人の死は言葉にできない。
そこからは記憶自体も曖昧だった。
歪む視界に映ったのはカナヲ先輩。
いや、鬼殺隊時代の栗花落カナヲ。
《お願いがあります。
頸を。落としてください》
《どうしてそんなことを言うの?》
《大切な人を無くしてしまいました。
もうこの世に留まる意味が無いのです
……だから。》
カナヲは頷き刀を振るった。
《……また会えます様に》
カナヲが手を合わせている姿を最後に目の前は暗く落ちていった。
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