折り鶴


「………なんで?」

任務を終えて、チュン太郎の知らせで急ぎ蝶屋敷に戻った。
昼間と同じように室内にナホ、キヨ、スミが居るのに、そこは足りなかった。
春は居るのに、春の音だけが足りない。
ーーなんで音がしないんだよ、、
  おかしいだろ?
  昼が夜に変わっただけだぜ?

そこからの記憶は曖昧だ。
ただ、その横たわる身体を抱きしめて、ずっと耳を澄ませて春の音を探している。だって、春の声を聞けるのは俺だけなんだからと……




外が白み始めていた。

「な?春。夜が明けるよ。
 寝たままじゃ見えないよな」

布団をめくり、春の体を抱き起こした。
しかしそれは同時に善逸に現実を突き付ける。

春の身体も足りなかった。

ご丁寧に丸めた敷布や何やで埋めて"あるように"見えていただけだった。

そんな事に気づかずに、痛みに、苦しみに気づかずに元気になれと声をかけ続けて、どんなに滑稽だっだろうか。

「………春の、嘘つき、、
 俺を騙すこと無かっただろ、、」
善逸は春の身体を抱きしめた。
たとえそれがただの器になってしまっていても。




いつの間にか眠りに落ちていた。
そう。これはたまにある"夢"って分かるやつ。
でも分かる必要が何処にあるんだろう。

あ、、そうか。

「俺を呼んだのは春だったんだね」
「呼んだのは善逸もでしょう。」

善逸の前で、春はニコリと笑う。
それは守りたかった、大切にしたかったその笑顔。

「ごめんな。春の声はいつでも俺に届くって言ったのに
 痛いも辛いも苦しいも何にも聞いてやれなくて
 春のことわかってやれなくて、

 ごめんなぁ……」

「聞こえなくて当たり前だよ。
 頑張って隠してたんだから。
 私は、聞こえてなくてホッとしてる

 だって、そんな私を覚えてて欲しくはないからさ。
 覚えていてもらうなら、傷を負う前の私を覚えていて欲しい。一緒に師匠のところで修行してた事とか、みんなでご飯食べた事とか、一緒に笑って過ごした日々を覚えていて欲しい。

 だって、善逸には笑っていて欲しいから」

春が善逸の手を取った。
覗き込むその顔は困った顔をしている。

「しかたないなぁ。
 春が言うなら笑うしかないじゃん」

涙が出て、ちゃんと笑えていないのはお互い様で、それでも善逸は笑った。


「ねぇ。それ、私にちょうだい」
春が指差すその先に、善逸が折った不恰好な折り鶴が落ちていた。拾い上げ、春をみると大きく頷く。
「こんなので良いなら持ってったらいいよ」
春へと差し出すとその折り鶴は風も無いのに善逸の手を離れ春の手の上に飛んでいく。

「ありがとう

 善逸。生きてね。ずっと。

 ……迎えに、、行かないから。」



大事だから。大好きだったから。
私はここでさよなら。

大丈夫。私にはあなたがくれた折り鶴(つばさ)がある。

だから、どうか生き続けてください。




ーーーーーー

目覚めた善逸は腕の中の春を再び横たえた。

どうか最期のおわかれに訪れる人たちの記憶に痛々しい姿が残りませんように。

髪も綺麗に流れるように撫で付けて最後に胸の上に乗せた手の上に約束をした折り鶴を乗せ、もう一度その顔を見ると春の顔はどこか微笑んでいるように見えた。


さようなら。大切な君。


善逸が部屋を後にした後、開いた窓から風が吹き、春の手の上に乗っていた折り鶴がその風に乗って空へと飛び立っていった。

空へ高く、高く…




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あとがき

事あるごとに書き上がっていると言っていた善逸夢です。死ネタでごめんなさいと言う感じではありますが。
昔サイト運営をしていた時に作った話を作品変えしました。タイトルはそのまま「折り鶴」
もしもピスメ夢でこの内容を読んだことある気がすると思われる方がいたら、それは昔の私かもしれません(笑)
もう一編、別な夢あったはずなんですがそちらはあまり記憶になく、、、。きっと自身で闇に葬ったのでしょう。傷は抉らない方針です。

22.5.11




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