「ううん。いつも思ってた。北くんと知り合わなかったら私、こんな素敵な1年を過ごせてなかったと思う」こんな苦しい気持ちを知ることもなかった。誰かのことを考える胸の痛みも。それは時として幸せとは遠いところにある感情にもなるけれど、それを知らなかった頃の自分にはもう戻れない。北くんと出会わない幸せも多分どこかにあるんだろう。けれどそんな自分はもう考えられない。誰に何と言われようと、私は北くんに恋した今の自分の人生が愛しい。「俺もおんなじに思っとるよ」北くんは表情を和ませて言った。きっと気持ちを伝えるなら今だ。幸い、私たちの両隣は誰も座っていない。いや周りは自分達のことに集中しているから私たちの会話なんて耳には届かないか。