そのほかにも、わたしが彼とかわしたくちづけは数あったけれど、どうしてだか・あの日の細やかなくちづけだけをいまのわたしは覚えているのだ。目を閉じれば、耳をすませば・まるで噛み合わない会話と、そのくちびるが持つ熱がよみがえる。それがわたしの、あの日のはなし。