そのほかにも、わたしが彼とかわしたくちづけは数あったけれど、どうしてだか・あの日の細やかなくちづけだけをいまのわたしは覚えているのだ。目を閉じれば、耳をすませば・まるで噛み合わない会話と、そのくちびるが持つ熱がよみがえる。それがわたしの、あの日のはなし。

いつかの白昼夢

美しく沈む恋のおはなし

  1. 美貌に愛された乙女
  2. 夜に誘われた薔薇のように
  3. 奪われ続けた乙女の微笑み
  4. 沈んだ恋を散らせましょう
  5. たくさんの疑問符が続く日
  6. 大人に求めたきらめく太陽
  7. 真っ赤に染まる目尻に接吻
  8. 夜明けとともに没落してね
  9. 想い出の宝箱を閉めた昨日
  10. 届かない愛があるなんて知らなかった

そっと潤んだ唇の艶めき

  1. 獣のように跨がった夜明け前
  2. 苦笑して街角に立ち尽くして
  3. 差し込まなかった希望の約束
  4. 少しでも大人になりたかった
  5. こんな感情が生まれなければ
  6. 紅のルージュ、偽りの貴婦人
  7. 形に見える物だけ信じていたい
  8. ピンヒールで踏みにじるように
  9. Yシャツに紅を隠しただけ
  10. 惹きつけられないのが悪いのよ

ゆきずりの愛に発熱

  1. 聞き飽きた切実な言葉の束
  2. ハンマーでも壊れない宝石を
  3. 顔じゃない、お金じゃない、愛じゃない
  4. いつの間にか塗られた赤い爪
  5. わかりたくなかった残骸
  6. 無気力な人間に捧げる一生
  7. 香水に込められた複雑な気持ち
  8. 薔薇色のカーテンに身を包んで
  9. 氷漬けのマネキンのように
  10. 平行世界で生きましょう

結んだ両手が離れられなくて

  1. 無気力な体が浮遊して
  2. まだ未熟だった日を思い返すと
  3. 後悔する暇をください
  4. 見世物のような世界で笑うこと
  5. 気づかなかった屈辱の居場所
  6. その手に触れることこそ罪
  7. 自分自身の幸せ、親愛なる友の不幸せ
  8. あれが泥船だと知っていたよ
  9. 無秩序の噂を涙にかえて
  10. 面影は遠い彼方へ消えていくもの

絡ませた吐息の行方

  1. つまらない物語も微笑んで
  2. 固く閉じられた清楚な乙女
  3. あんな女優にだって負けないわ